知らないと怖い!相続税の税務調査まとめ

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相続税の申告を終えてホッと一息・・と思っていったら「税務調査が入った!」という話は珍しくはありません。相続税は「税務署が最も申告内容の調査に力を入れている税金」とされており、申告者のうち20~30%が税務調査を受けています。理由として相続税はとても複雑で専門的な知識が必要とされ、不備が出やすいと言われています。今回は税務調査の実態と対処法をまとめてみました。

過少申告の可能性が考えられる場合は調査が入りますが、税金を払いすぎている場合はその旨が連絡される事はありません。過払い金の還付はこちらから再申告必要なので注意が必要です。

税務調査が行われやすい人は誰?


出典:国税庁「令和4年事務年度における相続税の調査等の状況
相続税の税務調査を受けた場合、どれだけの申告漏れが発覚するかという、国税庁の発表によれは令和4事務年度の税務調査件数は合計8196件で申告漏れ等の非違件数は7036件となっています。もし税務調査が入った場合、全体の約9割に追徴課税が発生している事になります。一般的に調査対象として選ばれやすいのは、遺産相続が2億円以上になる富裕層です。そうなりそうな人は注意が必要です。また無申告にも厳しく取り締まりってます。令和事務年度には705中607件が申告漏れと判断されています。また近年、海外資産をもつ人が調査対象になるケースが増えており、追徴課税が発生する傾向にあります。

税務署の使うシステムと収集している財産情報

全国12箇所の国税局と524箇所の税務署をネットワークで結び、申告・納税の実績や各種の情報を一元的に管理するksk(国税総合管理)システムを駆使し、相続税の金額が正しいか、申告漏れがはないかなど、徹底的にチェックしています。

不動産

被相続人の死亡届と同じタイミングで、市区町村の役場から不動産情報は税務署へ送られます。また名義変更の際は法務局から登録免許税の情報を入手します。税務署は一定以上の固定資産税が発生するかどうかを推測し確認します。また各種特例措置を利用した場合は、計算方法が適切かチェックします。

生命保険

生命保険会社から税務署へ支払い報告書が提出されます。また2018年より「契約者情報」も税務署に提出されるようになったため、相続が発生した時点で契約されていた生命保険の内容を確認します。

銀行預金

税務署は相続人の事前了承なしで各金融機関に紹介をかけることで金融資産情報を入手する事ができます。銀行の残高から、出金や別の口座に移したお金の動きを見て、相続開始の残高を推測します。

その他

所得税申告書、源泉徴収票、退職手当金等受給者別支払調書、国外送金等調書、国外財産調書、大口財産の相続人名簿、高額所得者名簿、競走馬、高級外車、高級マンションなどの所得者名簿・・など

こんなケースは狙われやすい
出典:国税庁「令和3事務年度における相続税の調査等の状況」
  • 申告書に記載した相続財産の金額が税務署の把握している金額と乖離がある
  • 生前5年以内に多額の預貯金が引き出されている
  • 多額の借入金があるのに、見合った財産がない
  • 子供や孫の名義が収入と比較して多い
  • 生前の土地・株式等の譲渡代金や多額の退職金が申告書に含まれていない
  • 生前の不動産所得の申告、配当金や株式譲渡の申告があるのに、相続税の申告がすくない

税務調査はいつくる??

一般的に相続税の税務調査は「被相続人が亡くなって3回忌が済んだころ」、具体的には申告の提出から1年~1年半ごろが多いとされています。ただし場合によって2,3年後に行われるケースも多いので油断は禁物です。通常、電話で事前通知が行われ、調査日の都合を聞かれます。日程の変更も都合が悪ければ可能です。変更によって心象が悪くなることないので安心してください。相続税は時効が5年(悪質な場合は7年)となっておりますので、この期間が過ぎれば税務調査ははいりません。

事前通知で伝えられる内容

  • 調査対象となる納税義務者(相続人)の氏名と居住地
  • 実地調査の開始時期・調査場所・調査目的
  • 調査対象となる税目(相続税)
  • 担当する調査官の氏名と所轄税務署名
  • 調査日時と調査場所の変更が可能であること
  • 上記項目に記載されていない事項でも、非違の疑いがある場合は質問調査がおこなわれること

税務調査前に用意する資料

  • 相続税申告で使用した資料の原本一式
  • 被相続人の通帳一式(原本)
  • 相続人の通帳一式(原本)
  • 相続人所有の土地の権利証や不動産などの資産に関する資料
  • 相続人の認印

怖い相続税違反

相続調査の結果、申告内容に不備や金額漏れが発覚すると、修正が必要になります。またその際にはペナルティーも発生します。相続税法によれば悪質な場合は「不正行為により相続税又は贈与税を免れたものは10年以下の懲役まはた1000万以下の罰金(併科あり)」となっています。ですが追徴課税が課されるのが一般的です。

無申告加算税

正当な理由なく申告期限までに申告しなかった場合に課せられる税金

内容 税率
申告期限までに申告せず、自主的に期限後申告した場合 5%
税務調査により期限後申告した場合 納税額のうち50万円までの部分 15%
納税額のうち50万円を超える部分 20%

過少申告加算税

申告期限内に提出した申告書の金額が不足していた場合に課される税金

内容 税率
自主的に修正申告した場合
税務調査により指摘されて修正申告した場合 10%
税務調査により指摘されて修正申告した場合 追徴課税が「期限内申告税額」または「50万円」のいずれか多い金額を超える部分 15%

重加算税

内容 税率
財産を意図的に隠す、または証拠書類をした上で申告した場合 35%
財産を意図的に隠す、または証拠書類をした上で申告しなかった場合 40%

延滞税

相続税の納付期限(被相続人の死亡を知った日から10か月以内)までに納付されなかった場合に課される税金

内容
納付期限の翌日から2か月以内に納付した場合 年7.3%
又は
特例基準割合+1%の低い方※
納付期限の翌日から2か月を超えた場合 年14.6%
又は
特例基準割合+7.3%の低い方※
※特例基準割合とは、各年の前々年9月から前年8月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で割って得た割合に、さら年1%を足した数字。2024年の特例基準割合は1.4%

知らないと怖い「税金の落とし穴」

相続税は大きな金額が動くため、税務署側もやはり細かくチェックをします。税務調査によってありとあらゆるモノをチェックされますが、「こんなモノまで!」「こんなケースも?」といった事も少なくありません。

みなし贈与に注意

死後に発生する贈与税が心配なので、生きている間に贈与を考えて2300万円の土地と1200万円の自宅を子供に10000万円で売った場合、通常は売買なので贈与税はかからないと思うのですが注意が必要です。
実際の価格よりも安く譲渡すると、「その差額を譲渡した」とみなされ贈与税がかかる事があります。これをみなし贈与といいます。

長年かけてやった事が無駄に!

コツコツと孫のために孫名義で貯金通帳を作り、預金していても予想外の相続税を払う事になってしまう事があります。「あげた=贈与した」と思っていても、孫に「もらう」という意志がなければ、名義預金となり贈与と認められないケースがあります。
名義預金とは、口座の名義人と実際にお金を出した人が違う預金のことで、名義預金とみなさると贈与税ではなく、相続税の課税対象になる事があります。贈与契約書を作成するなどして客観的にわかるものを用意するか、サポートしてくれる信託を活用する事をおすすめ致します。

親に借金を肩代わりしてもらったお金に贈与税?

通常、親子間のお金の貸し借りであれば贈与税はかかりません。ですが返済能力のある人の借金の肩代わりは「貸し借りを装った贈与」とみなされて贈与税がかかる場合があります。また「返済の履歴」がないと贈与だと指摘される原因になるので、契約書は必ず作るようにしましょう。

非課税制度を使ったお金も税金がかかる場合がある?

教育資金に使用する事を条件に贈与税が非課税になる「教育資金の一括贈与(一人につき1,500万円)」を車や旅行といった別の目的で使用すると、他の贈与と同様に贈与税が発生致します。

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