相続税の申告を終えてホッと一息・・と思っていったら「税務調査が入った!」という話は珍しくはありません。相続税は「税務署が最も申告内容の調査に力を入れている税金」とされており、申告者のうち20~30%が税務調査を受けています。理由として相続税はとても複雑で専門的な知識が必要とされ、不備が出やすいと言われています。今回は税務調査の実態と対処法をまとめてみました。
税務調査が行われやすい人は誰?
出典:国税庁「令和4年事務年度における相続税の調査等の状況」
税務署の使うシステムと収集している財産情報
全国12箇所の国税局と524箇所の税務署をネットワークで結び、申告・納税の実績や各種の情報を一元的に管理するksk(国税総合管理)システムを駆使し、相続税の金額が正しいか、申告漏れがはないかなど、徹底的にチェックしています。
不動産
生命保険
銀行預金
その他
所得税申告書、源泉徴収票、退職手当金等受給者別支払調書、国外送金等調書、国外財産調書、大口財産の相続人名簿、高額所得者名簿、競走馬、高級外車、高級マンションなどの所得者名簿・・など
こんなケースは狙われやすい
- 申告書に記載した相続財産の金額が税務署の把握している金額と乖離がある
- 生前5年以内に多額の預貯金が引き出されている
- 多額の借入金があるのに、見合った財産がない
- 子供や孫の名義が収入と比較して多い
- 生前の土地・株式等の譲渡代金や多額の退職金が申告書に含まれていない
- 生前の不動産所得の申告、配当金や株式譲渡の申告があるのに、相続税の申告がすくない
税務調査はいつくる??
事前通知で伝えられる内容
- 調査対象となる納税義務者(相続人)の氏名と居住地
- 実地調査の開始時期・調査場所・調査目的
- 調査対象となる税目(相続税)
- 担当する調査官の氏名と所轄税務署名
- 調査日時と調査場所の変更が可能であること
- 上記項目に記載されていない事項でも、非違の疑いがある場合は質問調査がおこなわれること
税務調査前に用意する資料
- 相続税申告で使用した資料の原本一式
- 被相続人の通帳一式(原本)
- 相続人の通帳一式(原本)
- 相続人所有の土地の権利証や不動産などの資産に関する資料
- 相続人の認印
怖い相続税違反
相続調査の結果、申告内容に不備や金額漏れが発覚すると、修正が必要になります。またその際にはペナルティーも発生します。相続税法によれば悪質な場合は「不正行為により相続税又は贈与税を免れたものは10年以下の懲役まはた1000万以下の罰金(併科あり)」となっています。ですが追徴課税が課されるのが一般的です。
無申告加算税
正当な理由なく申告期限までに申告しなかった場合に課せられる税金
内容 | 税率 | |
---|---|---|
申告期限までに申告せず、自主的に期限後申告した場合 | 5% | |
税務調査により期限後申告した場合 | 納税額のうち50万円までの部分 | 15% |
納税額のうち50万円を超える部分 | 20% |
過少申告加算税
申告期限内に提出した申告書の金額が不足していた場合に課される税金
内容 | 税率 | |
---|---|---|
自主的に修正申告した場合 | – | |
税務調査により指摘されて修正申告した場合 | 10% | |
税務調査により指摘されて修正申告した場合 | 追徴課税が「期限内申告税額」または「50万円」のいずれか多い金額を超える部分 | 15% |
重加算税
内容 | 税率 | |
---|---|---|
財産を意図的に隠す、または証拠書類をした上で申告した場合 | 35% | |
財産を意図的に隠す、または証拠書類をした上で申告しなかった場合 | 40% |
延滞税
相続税の納付期限(被相続人の死亡を知った日から10か月以内)までに納付されなかった場合に課される税金
内容 | |
---|---|
納付期限の翌日から2か月以内に納付した場合 | 年7.3% 又は 特例基準割合+1%の低い方※ |
納付期限の翌日から2か月を超えた場合 | 年14.6% 又は 特例基準割合+7.3%の低い方※ |
知らないと怖い「税金の落とし穴」
相続税は大きな金額が動くため、税務署側もやはり細かくチェックをします。税務調査によってありとあらゆるモノをチェックされますが、「こんなモノまで!」「こんなケースも?」といった事も少なくありません。
みなし贈与に注意
死後に発生する贈与税が心配なので、生きている間に贈与を考えて2300万円の土地と1200万円の自宅を子供に10000万円で売った場合、通常は売買なので贈与税はかからないと思うのですが注意が必要です。
実際の価格よりも安く譲渡すると、「その差額を譲渡した」とみなされ贈与税がかかる事があります。これをみなし贈与といいます。
長年かけてやった事が無駄に!
コツコツと孫のために孫名義で貯金通帳を作り、預金していても予想外の相続税を払う事になってしまう事があります。「あげた=贈与した」と思っていても、孫に「もらう」という意志がなければ、名義預金となり贈与と認められないケースがあります。
名義預金とは、口座の名義人と実際にお金を出した人が違う預金のことで、名義預金とみなさると贈与税ではなく、相続税の課税対象になる事があります。贈与契約書を作成するなどして客観的にわかるものを用意するか、サポートしてくれる信託を活用する事をおすすめ致します。
親に借金を肩代わりしてもらったお金に贈与税?
通常、親子間のお金の貸し借りであれば贈与税はかかりません。ですが返済能力のある人の借金の肩代わりは「貸し借りを装った贈与」とみなされて贈与税がかかる場合があります。また「返済の履歴」がないと贈与だと指摘される原因になるので、契約書は必ず作るようにしましょう。
非課税制度を使ったお金も税金がかかる場合がある?
教育資金に使用する事を条件に贈与税が非課税になる「教育資金の一括贈与(一人につき1,500万円)」を車や旅行といった別の目的で使用すると、他の贈与と同様に贈与税が発生致します。