知らないと損する「空き家問題」

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2015年に空き家の適正な管理と利用活用を推進するための法律「空き家対策の推進に関する特別措置法」(空き家法)を2015年に施工しました。しかし少子高齢化で人口や世帯数が減少の一途をたどり、空き家は右肩上がりで増えました。そこで政府は、より厳しいペナルティを課す、「改正空き家法」を2013年12月いスタートさせました。

「改正空き家法」では適正に管理されていないほったらかしの空き家を、管理不全空き家と認定し、固定資産税を最大4.2倍にするペナルティーを設けています。

今回は「空き家問題」で最低限知っておいた方がいい情報をまとめました。関連するする法改正(不動産登記法や民法)など続々と法改正がなされているので、空き家を維持している方は必見です。

住宅用土地の税優遇が解除される?

法改正前は、ボロボロの家が建っているだけで、土地にかかる税金が軽減される特例が存在し、多くの放置された空き家がありました。特定の空き家に認定されるまでは、荒れ果てた状態の家が多く残されていましたが、空き家の持ち主に対するペナルティーはありませんでした。
しかし、法改正により特定空き家になる恐れのある空き家は「管理不全空き家に認定されます。この時点で家が建っていても、固定資産税の特例が解除され、固定資産税が最大4.2倍に跳ね上がります。

管理不全空き家の例

  • 壁や窓の一部が腐食・破損、落下の可能性がある
  • 雑草や枯れ草が管理されない(病害虫などが発生する可能性)
  • 敷地内にゴミなどが散乱、放置されている

特定空き家とは?

「特定空き家」とは、その状態や影響が地域の安全や景観に悪影響を及ぼす可能性があるため、自治体は所有者に対して建物の修繕や撤去、あるいは環境の改善を求めることができます。所有者がこれに応じない場合、自治体は法的手続きを経て直接介入し、必要な措置を行うことが認められています。
これまでは自治体は「助言・指導・勧告・命令」という段階を踏まなくてはなりませんでした。しかし法改正により、周辺住民の安心安全のために緊急性がある場合には、命令なしで特定空き家の代執行ができるようになりました。代執行費用は、全額空き家の持ち主に請求されます。支払えないと財産が差し押さえられ、たとえ破産しても差し押さえ義務を免れることはできません。

相続したら3年以内に登記しないと10万円以下の過料?

不動産を相続する際に必要な「相続登記」という手続きがあります。これまでは、相続登記を怠っても罰則がなかったため、多くの人が手続きを行わないままで問題はありませんでした。2024年4月1日から相続登記が義務化されることになりました。
この改正法により、不動産を相続した人は、所有権の取得を知った日から3年以内に名義変更の登記を申請しなければならなくなりました。この手続きを怠ると、正当な理由がない限り、10万円以下の過料が科されることになります。

相続登記しない正当な理由

相続登記を行わない場合、以下のような事情があれば、正当な理由として認められる可能性があります。

  • 相続人が非常に多いケース:
    相続人が多数で、戸籍関係書類の収集や他の相続人の把握に多くの時間が必要な場合。
  • 遺言や遺産範囲に争いがあるケース:
    遺言の有効性や遺産の範囲が相続人間で争われており、相続不動産の所有者が明確でない場合。
  • 相続登記を行う者が重病のケース:
    重病その他重大な事情がある場合。
  • 家庭内暴力の被害者であるケース:
    家庭内暴力の防止法に基づく被害者であり、生命や身体に危害が及ぶ恐れがある状態で避難している場合。
  • 経済的困窮があるケース:
    経済的に困窮しており、登記申請に必要な費用を負担する能力がない場合。

相続してから3年以内に売ると3000万円の控除の対象に?

相続で取得した空き家や土地を売り、利益が出ると不動産譲渡所得税がかかります。ですが相続した空き家のうち、一定の要件を満たすものは「相続空き家の3000万円特別控除」を利用することができます。「相続空き家の3000万円特別控除」を利用した場合の譲渡所得の計算式は、以下の通りです。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 3,000万円

譲渡所得に対して3,000万円の特別控除が適用されるため、節税効果は非常に大きいです。この控除により、ほとんどの場合で譲渡所得がゼロになります(マイナスの場合もゼロと見なされます)。したがって、譲渡所得がゼロの場合、税金が発生しません。この制度は、譲渡所得から大きな額を控除できるため、実質的に税金を支払う必要がなくなることが多いです。

家屋に関する要件

3,000万円の特別控除を利用するためには、以下のすべての条件を満たす家屋である必要があります。

  1. 被相続人が居住していた家屋:相続開始直前に被相続人が住んでいた家であること。
  2. 建築年限の条件:1981年5月31日以前に建てられた家屋であること。
  3. 区分所有登記のない家屋:区分所有登記がされていない家屋であること。
  4. 被相続人の単独居住:相続開始直前に被相続人以外にその家に住んでいた人がいなかったこと。
  5. 用途の一貫性:相続の時から譲渡の時まで、事業用、貸付用、または他の居住用に供されていなかったこと。

相続した土地を国が引き取ってくれる?

土地を相続すると聞くと、一見良いニュースのように思えますが、特に地方での事例を見ると、実際は利用価値の低い土地を相続し、管理の手間やコストが増えるばかりで、売却も難しいという問題が近年増えています。土地は他の物とは異なり、単純に「捨てる」ことができません。これまでの状況では、相続した土地が売れない場合、自分で管理を続けるしかありませんでした。
このような問題に対処するために制定されたのが、「相続土地国庫帰属制度」です。この制度は、簡単に言うと、相続で得た遺産の中で不要な土地がある場合、一定の条件のもとで国がその土地を引き取るというものです。

国に引き取ってももらえないケース

  1. 建物がある土地
  2. 担保権や使用収益権が設定されている土地
  3. 他人(地元住民)の利用が行われている土地
  4. 特定有害物質により汚染されている土地
  5. 境界(所有権の範囲)があきらかでない土地・所有権争いのある土地
引取りが決定した場合は国に10年分の土地管理総統区額の負担金(20万程度)を納めなければなりません。

民法改正で空き家問題も変わる?

旧民法では共有の建物や土地を修繕しり、整備したりするには全員の同意が必要とされていました。しかし民法改正により2023年4月1日から外観、構造、機能、用途など大きく変わるものでなければ、共有の持ち分の過半数の同意で軽微な変更ができるようになりました。裁判所に申し立てを行い、法務局に行方不明者の持ち分相当を供託すると、共有の持ち分を取得したり、第三者に売ったりすることができるようになりました。

また、旧民法では相続人全員が相続放棄をしても、相続人は空き家の管理責任からは逃れられませんでした。そのため空き家が荒れ果てて、近隣に迷惑をかけた場合、放棄しても相続人が責任を負わなければならなかったのです。ですが民法改正から相続放棄をした場合、責任が残るのは放棄時点で空き家を占有していたのみとなりました。その空き家に住んでいなければ、管理義務もなくなりました。

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